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2025.01.07
研究ニュース
令和6年12月7日~8日に弘前大学 文京キャンパスで行われた東北植物学会第14回大会で、理学部理学科4年生で河合研究室に所属する色川璃音さんが大会優秀発表賞(口頭発表の部)を受賞しました。題目は、「Cyanothece sp. ATCC51142が持つ2種類のFNRの機能解明」で、卒業研究として着手している研究の現段階までに得られている成果の発表です。
光合成反応において光化学系Ⅰから放出された電子は電子運搬体であるフェレドキシン(Fd)によって様々な代謝経路に供給されますが、中でもFerredoxin-NADP+ 還元酵素(FNR)はFdのメインターゲットとして知られています。FNRが合成するNADPHは同化系代謝(カルビン・ベンソン回路で行われる糖の合成など)で還元力として働くため、FdからFNRへの電子伝達は光合成生物の生存に必要不可欠です。通常、この2つの酵素はそれぞれ独立して存在します。ところが、ゲノム情報を探索したところある種のシアノバクテリア(植物と同じような光合成をする細菌)は多くの光合成生物が共通して持つFNR(FNR1)の他に、FdとFNRが繋がって1つの構造になっている酵素(FNR2)も持っていることが分かりました。今回、これら2つのFNRについて電子伝達活性を測定し、比較してみたところ、FNR2はFNR1に比べて非常に速い電子伝達速度を示しました。FNR2はFdとFNRが繋がった構造をしているため複合体を形成しやすく、反応が早く進むのではないかと考えられます。今後、さらに詳細な活性測定や機能、系統解析を行っていく予定です。FNR2の機能解明は、光合成における電子伝達メカニズムや光合成の進化に新たな知見を与えるのではないかと期待されます。
光合成は小学校でも習う内容ですが、その実態は非常に複雑で、いまだに多くの謎が残されています。研究がうまくいかず辛いこともありますが、試行錯誤を繰り返しながら課題を乗り越えていく過程は非常にやりがいがあり、日々新しい発見があってとても楽しいです。