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2025.02.05

研究ニュース

山形大学大学院理工学研究科博士後期課程1年生の萩野穣さんが、2024年5月に千葉市で行われた日本地球惑星科学連合2024年大会で、新潟県胎内市から産出した放散虫化石を用いた日本海の古環境復元についてポスター発表を行いました。

日本海は、後期漸新世から中期中新世(およそ2800〜1300万年前)にかけて、ユーラシア大陸から日本列島が分裂したときに形成されたと考えられており、日本列島の地殻変動等の影響を受けて様々な環境変動を経験したと考えられています。現在は対馬海峡・津軽海峡・宗谷海峡・間宮海峡の4つの浅い海峡を通じて外洋と接続し、表層水のみを交換する半閉鎖的な縁海となっています。

新潟県胎内市夏井地区では、胎内川沿いの段丘崖に中期中新世から鮮新〜更新世にかけての地層が連続的に露出しています。このうち、中期から後期中新世の地層である内須川層からは珪藻や放散虫*1の微化石が豊富に産出することから、本研究では、放散虫化石に基づいて内須川層の年代決定と、中期から後期中新世の日本海の古環境復元を行いました。

産出した年代指標種に基づいて、内須川層下部がおよそ1530〜1180万年前、中部がおよそ1180〜910万年前、最上部がおよそ910〜730万年前であることがわかりました。

つづいて放散虫群集データに対してQモードクラスター分析を行い、クラスターの時間的推移をもとに古環境ステージを認定しました。つぎに放散虫の生態に関する先行研究をもとに、産出した放散虫種を生息緯度や水深に応じて分類し、認定したステージと関連付けて古環境を復元しました。

古環境復元の結果、およそ1520〜1230万年前にかけては暖流と寒流双方が流入する、比較的温暖で穏やかな環境であったことが示唆され、およそ1230〜1040万年前にかけては、暖流の流入量および経路の変化と海水準変動の影響を受けたことが、暖流由来の中層*2種と水深1000メートル以深を指標する種の欠如から示唆されました。およそ1040〜900万年前になると寒冷化の進行と海峡深度の増大が示唆され、太平洋から深層水が常に流入していたと考えられます。

注釈

*1 放散虫:浮遊性の原生動物のなかまで、海にのみ生息する。二酸化ケイ素(SiO2)の骨格をもつグループが微化石として残りやすい。

*2 中層:ここでは水深100から500メートルを指す。

※この活動に対し、山形大学校友会 令和6年度事業「大学院理工学研究科博士課程学生研究発表奨励事業」による支援を行っております。

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