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2021.05.07

研究ニュース

生物学分野の富松裕教授らによる論文が Best Paper Awardに選出

生物学分野の富松 裕 教授らがPlant Species Biologyに発表した論文が、2020年のBest Paper Awardに選出されました。Plant Species Biologyは種生物学会が発行する植物の生態学および系統進化学の専門誌です。

筍が山菜として有名なチシマザサ(ネマガリダケ)は、日本海側のブナ林に多く生え、しばしば高さ3 m以上にもなって密生します。密生したチシマザサは樹木の実生更新を妨げると考えられていますが、光に乏しい林床で、チシマザサがどのように密生していくのかは分かっていませんでした。ササ類には、100年以上とも言われる長い一生のうち一度だけ、広い範囲で同調して一斉に開花し、結実後に枯死する特異な性質があります。また、長い地下茎を伸ばして、数十メートルにも及ぶクローン(個体)を発達させます。

本論文は、1995年に十和田湖畔のブナ林で一斉開花・枯死したチシマザサが再び密生していく過程を分析し、ギャップ(高木が倒れるなどして林床まで光が届くようになった場所)のような比較的明るいところで速く成長したクローンが、地下茎を伸ばして暗い林内へと広がっていくことを、複数のアプローチから明らかにしたものです。

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ブナ林内の明るい林床に映えるチシマザサ

このことは私たちの従来の研究(Matsuo et al. 2018)によって既に示唆されていましたが、本研究では土壌を剥ぎ取って地下茎の伸長方向を調べたり、ドローン撮影により林冠構造との関係を分析することで、直接的にクローンが広がってきた様子を捉えることに成功しました。チシマザサのように地下茎を伸ばして広がる植物には、侵略的外来種など、陸上生態系における優占種が多く含まれており、これらの植物が密生するメカニズムを解明することは重要な研究課題だと言えます。本研究は、秋田県立大学や東北大学、森林総合研究所との共同研究で、理学部卒業生の金子悠一郎さん、谷口稜太郎さんの研究成果も含まれています。

Best Paper Awardのウェブサイト

論文タイトル

Tomimatsu, H., Matsuo, A., Kaneko, Y., Kudo, E., Taniguchi, R., Saitoh, T., Suyama, Y. and Makita, A. (2020) Spatial genet dynamics of a dwarf bamboo: clonal expansion into shaded forest understory contributes to regeneration after an episodic die-off. Plant Species Biology 35: 185-196.


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