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2022.04.06

研究ニュース

(特集)科研費取得教員の声-オルガネラ間コンタクトサイトに集積する新規タンパク質の機能解析-(研究代表者:田村 康 教授)

地球上に存在するすべて生物の構成単位である「細胞」の中には,生命活動の基盤となるインフラが備わっています。例えば,生きるためのエネルギーを作り出す発電所(ミトコンドリア)や,膨大な遺伝情報,DNAを保存する図書館(核),不要になった細胞内成分を分解し再生するごみ処理再生工場(リソソームや液胞)などがあげられます。これらのミトコンドリアや核などのオルガネラと呼ばれる膜構造は,細胞内における役割が異なるので,細胞内の別々の住所に独立して存在すると考えられてきました。

しかし最近の研究によって,ミトコンドリア,核,液胞などの異なる機能を持ったオルガネラが直接結合する特殊な領域「オルガネラコンタクトサイト(CS)」が形成され,物質や情報をやり取りしながら機能することがわかってきました。私たちはこれまでに,新学術領域研究「オルガネラゾーンの解読」(2017年度採択),および基盤研究B「オルガネラ間の安定な結合を仲介する因子の網羅的同定と機能解析」(2019年度採択)を通して,このオルガネラCSに着目した研究を推進してきました。その過程で,これまで難しかったオルガネラCSを生きた細胞で可視化する技術や(Kakimoto et al., Sci. Rep. 2018; Tashiro et al., Fron. Cell Dev, Biol., 2020),オルガネラCSに集積するタンパク質をラベルして精製する研究手法の開発を行いました。さらにこの独自の研究手法を駆使することで,オルガネラCSに集積するタンパク質群を明らかにすることに成功しています。

今回採択された基盤研究B研究では,これまでの研究をさらに発展させ,私たちが独自に発見したオルガネラCSに集まる新規タンパク質の機能を解析することで,オルガネラCSの形成機構や生理的役割の解明を目指します。オルガネラCSは,これまでの細胞生物学の常識を覆す新しい概念で,未開拓の研究分野であるため,本研究の進展によって教科書を書き換える研究成果が期待されます。また,オルガネラCSの異常が,パーキンソン病やALSといった神経変性疾患と関係することが多数報告されていることから,本研究がこれらの疾患の病態解明や治療戦略の確立に貢献することも期待されます。

ミトコンドリア(赤紫色)上に存在する小胞体とのコンタクトサイト(緑色)を可視化した細胞

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