News

新着情報

ホーム > 新着情報 > 博士後期課程1年の松谷健太さんが日本物理学会第77回年次大会(2022年)学生優秀発表賞を受賞

2022.05.19

研究ニュース

博士後期課程1年の松谷健太さんが日本物理学会第77回年次大会(2022年)学生優秀発表賞を受賞

2022年3月15日-19日に開催された日本物理学会第77回年次大会において、大学院理工学研究科博士後期課程1年(物理学分野)の松谷健太さん(当時博士前期課程2年、化学分野)が行った口頭発表「ニューラルネットワークポテンシャル分子動力学計算によるガラス構造解析-中距離構造の密度汎関数近似依存性」に対して学生優秀発表賞が授与されました。

結晶と異なり原子が不規則に並んでいる固体のことをアモルファスあるいはガラスと呼びます。例えば、窓ガラスやスマートフォンのディスプレイ、光ファイバーなどはシリカ(SiO2)ガラスでできています。シリカガラスの場合、Si原子がO原子4つと結合してできる四面体が頂点同士でつながった不規則な網目構造を有します。この網目構造のつながり方に規則性が潜んでいるとされ、ガラスの性質(硬さや割れにくさ、透明度など)を決める鍵になっていると考えられていますが、その原子スケールの詳細については謎のままです。

そのような原子スケールの振る舞いを研究する方法として、第一原理計算と呼ばれるシミュレーション法が有力です。ただ、ガラスのような不規則な構造を調べるには、数千原子以上を扱う大規模な計算が必要なのですが、第一原理計算では数百個が限界で不可能でした。そこで、松谷さんは、第一原理計算を小規模に行った結果を学習し大規模計算に拡張する「機械学習分子動力学シミュレーション」と呼ばれる技術に着目し、シリカ類似物質のゲルマニア(GeO2)ガラスの大規模計算に挑戦しました。計算で用いられる標準的な近似(計算時間を抑えるための工夫)手法に加え、より高精度な「ハイブリット汎関数近似」でも効率的に学習する方法を新たに開発して、ゲルマニアガラス構造の高精度機械学習分子動力学シミュレーションに初めて成功しました。さらに、硬さや割れにくさにつながる高圧下の構造変化も調べ、実験で見られている四面体構造の維持を再現するには、ハイブリッド汎関数に基づくシミュレーションが必須であることを明らかにしました。

本研究は、ガラス構造を高精度に再現する原子スケールモデルの解析を可能とするものであり、ガラスの特性を決定づける網目構造の規則性の解明、およびそれを活用した新材料設計への道が切り拓かれます。また、開発した手法は、他の様々な不規則系材料の解析にも応用でき、今後の幅広い展開が期待されます。

 

sdg_icon_09_ja_2.png