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2022.06.14

研究ニュース

博士後期課程1年の飯田茜さんが第45回日本バイオレオロジー学会年会で優秀ポスター賞を受賞

  第45回日本バイオレオロジー学会年会で優秀ポスター賞を手に記念撮影する博士後期課程1年の飯田茜さん

博士後期課程1年の飯田茜さんが第45回日本バイオレオロジー学会年会で優秀ポスター賞を受賞しました。飯田さんの研究するアルツハイマー病は、アミロイドβ(以下Aβ)蛋白質が脳細胞表面に凝集・蓄積することを特徴とし、神経細胞死が進行することで認知機能の低下や記憶障害が引き起こされる認知症の一種です。脳内では間質液という体液が常に流動しており、Aβを含む老廃物を脳外へ除去し、蛋白質の凝集を抑制しています。しかし、体液の流動がAβの凝集を促進するという研究も近年報告されており、間質液の流動がAβの凝集に与える影響の解明がアルツハイマー病の解明に向けた1つの重要な因子であることが示唆されました。従って、間質液の本質的な役割を解明するためにはAβの供給・排斥を伴う開放系にてAβの凝集挙動を追跡する必要がありますが、多くの研究は脳内環境を無視した、Aβの供給・排斥のない閉鎖系にて実験が行われています。

以上の背景を踏まえ、本研究では脳内を模倣したAβの供給・排斥を伴う環境下にて、細胞膜を模倣した脂質膜上におけるAβを分子レベルで観察できる新しい実験系を構築しました。本実験系を用いて、脂質膜上の初期のAβ凝集挙動を解明し、蛋白質凝集に対する開放系の役割の提案を目的としました。具体的には、1分子のAβの定量化に成功し、Aβ添加後1時間の段階で、閉鎖系と比較して開放系が有意に凝集を促進していることを明らかにしました。また、閉鎖系では吸着分子数が飽和するのに対し、開放系では分子数が増加しつづけ、Aβの供給・排斥が脂質膜とAβ間の吸着量にも影響を及ぼしていることを見出しました。

以上の結果から、脳内を模倣した開放系がAβの凝集のみならず吸着量の増加にも関与していることが示唆され、開放系を考慮してアルツハイマー病の機構を解明していく重要性を明確化しました。今後、開放系における流動の変化がAβ凝集ならびに脂質膜との相互作用の機構を解明することで、アルツハイマー病の初期の機構解明ならびに創薬に繋がることが期待されます。

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