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2022.11.04

研究ニュース

ミトコンドリア-小胞体間コンタクトサイトの動的変化が小胞体ストレス軽減に重要であることを発見

 真核細胞内には、ミトコンドリアや小胞体などのオルガネラと呼ばれる膜構造が発達しています。これらのオルガネラは固有のタンパク質を自身の膜構造内に隔離、濃縮することで、独自の機能を発揮するため、空間的に独立して存在すると考えられてきました。しかし近年の研究によって、ミトコンドリアや小胞体が直接結合する「オルガネラ膜コンタクトサイト(Membrane Contact Site (MCS))」が形成され、その特殊な領域を介して脂質分子などが膜間を移動することなどが明らかになってきました。例えば出芽酵母では、ミトコンドリア-小胞体膜間でのリン脂質の輸送を促進する働きを持ERMES複合体が、これらのオルガネラ膜を直接結合しています。
 本研究では、このERMES複合体が形成するミトコンドリア-小胞体間MCSの1細胞あたりの数が、適切に調節されるメカニズムの解明を目指して研究を行いました。その結果、ミトコンドリアの融合と分裂が、適切なミトコンドリア-小胞体間MCSの数の調節に重要であることを明らかにしました。また小胞体内に構造異常タンパク質が蓄積する小胞体ストレス条件下で、ミトコンドリア-小胞体間MCSを形成するERMES複合体のクラスター構造が解離することを見出しました。興味深いことに、解離したERMES複合体は、小胞体からミトコンドリアへリン脂質輸送を輸送する能力が低くなっていました。この現象の生理的意義を検討したところ、ERMES複合体の機能の低下によって、小胞体膜に脂質が蓄積することで小胞体の体積が増加し、小胞体ストレスの軽減に貢献する可能性があることを見出しました。小胞体ストレスは、アルツハイマー病やパーキンソン病のような神経変性疾患も関連が深いことが報告されています。本研究によって明らかとなった小胞体ストレスを軽減する新たな分子メカニズムを応用することで、神経変性疾患の新たな治療戦略の開発につながるかもしれません。
 本研究成果は10月13日付でCell Pressから発行されるオープンアクセス・ジャーナルiScience誌(電子版)にpre-proof版が掲載されました。本研究は、山形大学、理化学研究所、京都産業大学の研究グループによる共同研究で、文部科学省科学研究費補助金および、日本医療研究開発機構(AMED)、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の支援を受けて行われました。

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