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数理結晶学、応用代数学

新物質の結晶構造を解析

ー成功率とスピードアップを支える数学理論ー

数理科学分野 富安亮子 准教授

 富安准教授(数理科学分野)が参加したJ-PARC粉末中性子回析データ解析ソフトウェア開発プロジェクト(代表:高エネルギー加速器研究機構(KEK)の神山崇教授)は、グラフの解析に関わる数学理論を、粉末X線・中性子線回析測定装置より得られる実験データに適用することで、従来のものと比較して結晶格子決定の成功率・計算効率ともに大きく改善されたソフトウェアを開発しました。

 粉末回析測定装置は、多くの製造企業や試験研究機関で日常的に使われており、解析の信頼性や自由度の向上は、新物質開発のスピードを向上させるための重要な鍵となっています。このような背景の中、富安准教授(数理科学分野)は、粉末回析法の解析に現れる様々な問題に、整数論で議論される問題と非常によく似た形に定式化できるものがあることに気づき、プロジェクトメンバーと議論を重ねる中で、粉末回析図形の格子決定を解くアルゴリズムを開発しました。このアルゴリズムはプログラムとして実装され、ソフトウェアCONOGRAPH(コノグラフ)として、2013年よりKEKが管理するサーバで配布されています。

 今回開発したソフトウェアは、既存のソフトウェアと明確な基準の下で比較を行った結果、他ソフトウェアが成功率40-60%の実験データに対し、80%の成功率が得られました。また、他のいずれかのソフトウェアが解析に成功したケースで全て成功していることに加え、他のどのソフトウェアでもできなかったケースでも成功しています。さらに計算時間は、結晶学で徹底探索に分類される指数付けソフトウェアDICVOLと比較して、1/5でした。

 本研究では「代数学で使われるグラフ解析の議論を結晶構造解析の格子決定に用いる」という新しい視点から改良した解析ソフトウェアが開発されました。本研究の成果は、国際結晶学連合が発行する学術雑誌Journal of Applied Crystallographyの2017年4月号に掲載されました。


図:結晶構造(左)と単位胞(右)

 ※結晶性の物質は、ある一つのまとまり(単位胞)を3方向に積み重ねた、レンガ壁のような
  周期性のある構造をしている。この繰り返しの単位となる単位胞の形・大きさを決定する
  ことが、結晶格子決定(指数付け)と呼ばれる、結晶構造解析で最初に行う解析。

<用語解説>

 粉末回析測定装置:
  多数の単結晶の集合である粉末結晶試料のX線回析を測定する装置で、全国に数千台あると
  言われている。粉末試料からのX線回析は、さまざまな方向をランダムに向いた単結晶から
  の回析の総和となる。この回析情報から、未知試料の構成成分や構造に関する情報を得るこ
  とができる。

 J-PARC(大強度陽子加速器施設):
  日本原子力研究開発機構(JAEA)と高エネルギー加速器研究機構(KEK)が共同で建設・
  運営を行っている最先端科学研究施設。実験研究施設では最先端の物質科学・生命科学研究、
  素粒子物理研究などが行われている。

<関連リンク>

 プレスリリース
  数学のグラフ解析を用いて、新物質の結晶構造を解く手法を開発(2017.4.20)
  学長定例記者会見を開催しました(2017.4.20)

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