News

新着情報

ホーム > 新着情報 > 物理学分野の安東講師らの論文が 2023 PCCP HOT Articleに選出

2023.04.05

研究ニュース

物理学分野の安東講師らの論文が 2023 PCCP HOT Articleに選出

サブナノサイズ(※1)の細孔内に分子やイオンを脱挿入できる多孔性材料が近年注目されています。新規多孔性材料の創製や新物性の発見に関心が集まる一方、その根底のメカニズムに対する我々の理解は未だ極めて限定的です。物理学分野の安東研究室では、(様々な物質で普遍的に見られる)電子と原子核の量子力学的な絡み合い運動に着目した理論研究を展開しており、その一つの取り組みとして多孔性材料の学理探求を掲げています。

安東講師らは、金属内包フラーレン結晶の代表例である[Li+@C60]PF6-に着目しました。この結晶ではサッカーボール状のフラーレンが規則的に配列し、各々のフラーレン骨格がリチウムイオンを一つ内包します。このリチウムイオンは、24 K以上の温度で二つのサイトに等確率で分布しますが、24K以下の低温では反強誘電的相転移を示して一つのサイトに局在化することが知られています。しかし、フラーレン骨格の歪みや周囲のPF6-イオンの配置、電子・原子核の量子性等が複雑に関連し、局在化のメカニズムは明らかでありませんでした。そこで安東講師らは理論プログラムの開発・応用を通して、フラーレン骨格やPF6-の配位構造の僅かな歪み(約10-2オングストローム)が分子間相互作用と細孔内ポテンシャル(※2)にいかに影響するか調べ、その影響がリチウムイオンの局在化につながる仕組みを初めてつまびらかにしました。また、テラヘルツ域吸収スペクトルを計算し、リチウムイオンの局在化と実験的に得られるスペクトルの関連を明らかにしました。本研究は、マクロの複雑な物性に対してミクロの視点で筋道立てて理解する方策を提案するものであり、多孔性材料の言わば基本の基を明らかにするものです。

本成果は、英国王立化学会が発刊するPhysical Chemistry Chemical Physics誌(インパクトファクター3.945)に掲載されました。編集者と外部専門家から高く評価され、今年の注目論文(HOT Article)にも選出されました。本研究の一部は、科学研究費補助金(若手研究 JP18K14234、基盤研究C 22K05046)と静岡大学電子工学研究所の共同研究プロジェクトの支援を受けて実施されました。

なお、山形大学小白川キャンパスでは電子状態計算プログラムGaussianとGaussViewが利用できます。利用希望者は安東まで(理学部四号館C308号)。

著者名: Hideo Ando* and Yoshihide Nakao                        論文題目: Localization of nuclear wave functions of lithium in [Li+@C60]PF6-: molecular insights into two-site disorder–order transition                       掲載雑誌: Physical Chemistry Chemical Physics DOI: https://doi.org/10.1039/d2cp05835a(2023年6月末までフリーアクセス)

※1 およそ100億分の1メートル                             ※2 内包リチウムイオンの量子力学的運動を支配するポテンシャルエネルギー