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2023.08.29

研究ニュース

OSECHIを持って古墳の中へ ~高校と連携した宇宙線測定研究~

地球には宇宙から常時、様々な種類の放射線が飛んできています。宇宙からくる放射線・粒子を総称して宇宙線と呼びます。宇宙線は地球の大気と衝突し、二次的な素粒子ミューオンが上空で発生します。ミューオンは地上のあらゆるところに降り注ぎ、この記事を書いている私や読んでいる皆さんの体を今も貫いています。
 
ミューオンは貫通力が高いのですが、それでも山や建物のような大きな構造物があると一部が吸収されてしまいます。この性質を利用して、構造物越しにミューオンの到来方向と数を測定すると、その方向に存在する物質量が分かるミューオグラフィという技術があります。すでに実用化されており、例えば火山やピラミッドの内部構造の推定に使われています。
 
早稲田大学本庄高等学院では、学校近隣の古墳について文理融合型の研究活動「墳Q」が大塚未来教諭の下で行われています[1-3]。その一部として、古墳の内部構造をミューオグラフィで調べてみようというテーマを中心に、研究者グループが検出器の開発や測定などの共同研究を行ってきました。検出器はOutreach & Science Education Cosmic-ray Hunting Instrument (OSECHI)と言う呼称のシンチレーション検出器で、回路を含めた一式が重箱に格納されています[4]。
 
早大本庄・大阪大・高エネ研・名古屋大・総研大そして山形大(理工学研究科・飯山陽輝、理学部理学科・八重樫大、物理分野 中森健之教授)の研究チームは、2023年8月に、埼玉県本庄市にある秋山庚申塚古墳でOSECHI検出器によるテスト測定を実施しました。卒業研究[5]で開発した安定動作のための設定プログラムの実地試験でもあります。横穴式の円墳で、石室にも入れて構造が分かっているため、装置の動作確認には適した古墳です。この日は早大本庄の生徒さんの新メンバー勧誘も兼ねて、大勢の見学者を迎えたにぎやかな実験となりました。
 
 
[1] 早稲田大学本庄高等学院(2021), 日本惑星科学連合, 高校生セッション, 07-P36
[2] 早稲田大学本庄高等学院墳Q班(2022), 日本考古学会総会, 高校生ポスターセッション, K04
[3] M. Ohtsuka, et al.(2023) , Proceedings of Science (ICRC2023), 1628
[4] K. Ueno, et al.(2023), Proceedings of Science (ICRC2023), 1623
[5] 飯山陽輝(2023), 山形大学理学部卒業論文
 
 

蒸し暑い庚申塚古墳の中でOSECHI検出器の立ち上げ作業と見守る生徒さんたち