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2024.01.17
研究ニュース
11月12日(日)岩手県盛岡市の岩手大学で開催された、第57回日本栄養食糧学会東北支部会において、理工学研究科(理学)修士1年・工藤龍河くん(指導教員;小酒井貴晴教授)が優秀発表賞を受賞しました。発表研究課題は「マウス結腸上皮においてゲラニオールの管腔側刺激はセロトニン放出を介して能動的Cl⁻分泌を促進する」です。ゲラニオールは揮発性のイソプレノイド・アルコール体で、バラの香りを有するため香料として食品に添加されています。また、酵母の発酵でも産生され、日本酒やワインなどの風味深さを生み出すと言われており、日々の生活の中で摂取されています。本研究課題では、実験動物であるマウスの大腸において、ゲラニオールが嗅覚受容体43を発現するEC 細胞(腸管内分泌細胞の1種類)からのセロトニン放出を促し、セロトニン4受容体を介して腸管神経叢を興奮させることで、腸管内腔へ塩化物イオンを能動的に分泌する作用を有することを明らかにしました。幸せホルモンとして注目されるセロトニンですが、実は体内の 90 % 以上は腸管に存在して、神経伝達物質として機能しています。また、消化管は第二の脳と言われるように中枢神経から独立して機能できる腸管神経叢も有しています。バラの香りを有するゲラニオールが大腸内腔から腸管神経叢を活性化させることは栄養生理学的に非常に興味深い知見です。塩化物イオンの分泌は最終的に水の分泌を誘導するため排便を促す効果はあります。応用利用の可能性として、ゲラニオールを含む食品やその食習慣によって、高齢時に乱れがちな正常な排便習慣や便秘防止に効果があるのではないかと期待されます。