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2024.03.05

研究ニュース

22万種類以上の化合物から単離したリン脂質合成阻害剤を用いて,リン脂質がミトコンドリア分裂の調節を行うことを解明しました。この研究成果は国際学術誌iScienceに掲載されました。

リン脂質は生体膜の主要成分であり,細胞や細胞小器官を形成する構造的な役割に加え,様々な生命機能を調節する役割をもっています。特定のリン脂質の生物学的意義を研究するためには,そのリン脂質の合成を阻害する薬剤を用いることが効果的ですが,これまでそのような化合物は開発されていませんでした。本研究では,田村研究室の大学院生,椎野浩也君(日本学術振興会特別研究員DC2)と,技術補佐員の橋本美智子さんが中心となり,東京大学の創薬機構から提供を受けた22万種類以上の化合物の中から,主要なリン脂質であるホスファチジルコリン(PC)の合成を阻害する低分子化合物(PCiB(PC inhibitors)-1, 2, 3, 4と命名)を複数単離しました。私たちは,これらの化合物を利用して細胞のPCの合成を阻害するとミトコンドリア*が断片化することがわかりました。これらの結果から,正常なPCの合成がミトコンドリア分裂の制御に重要であることがわかりました。また今回単離した化合物が,菌類にのみ存在するPC合成酵素を特異的に阻害することがわかりました。すなわち,PCiB化合物は,菌の増殖を特異的に抑制する抗生物質や農薬への応用が期待されます。以上の研究成果は,「Chemical inhibition of phosphatidylcholine biogenesis reveals its role in mitochondrial division」として国際学術誌iScienceに掲載されました。本研究は東京医科歯科大・細谷孝充教授・京都産業大学遠藤斗志也教授,東京大学小島宏建教授の研究グループとの共同研究です。

*ミトコンドリア:細胞の生存に必須のエネルギーを生産する細胞小器官

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