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2019.08.20

イベント情報

【物理学分野】理学部講演会(9/27)を開催します

理学部講演会を下記のとおり開催します。

日時

9月27日(金)13:30~14:30

場所

理学部12番教室

講演題目

原子・分子の多電子運動の量子力学的な記述 —波動関数理論から有効ポテンシャル理論へ—

講師

東京大学大学院理学系研究科化学専攻
加藤 毅 准教授

講演内容

 原子や分子の多電子系の運動は対象とする原子や分子のハミルトニアンの固有状態が既知であれば、量子力学の教科書にあるように、固有状態の線形和で記述することが出来る。しかし、実際に多電子の全ての固有状態を精度よく求めることは困難である。

 そこで、量子化学の分野では軌道概念を導入することによって、多次元の電子基底状態波動関数をスレーター行列式を使った表現で近似し、電子基底状態からの実時間発展を波動関数を構成するパラメタの時間発展によって置き換えることが行われる。そのような表現の中で、時間依存ハートリー・フォック法は最も早くから研究されてきた。軌道概念を導入することは、軌道エネルギーという概念も同時に導入することを意味し、化学反応解析における HOMO あるいは LUMO の重要性は軌道エネルギーを使って摂動論的な立場から自然に導かれる。

 近年の極超短・強レーザーパルス発生技術の進歩は、原子・分子と近赤外領域にある光との相互作用において、高度に非線形な相互作用を可能とした。最もよく知られている現象の一つに、1994年に K.C. Kulander らが見出した He 原子の非逐次的な二電子イオン化の励起光強度依存性がある(knee 形状と呼ばれる)[1]。このような非摂動論的電子運動を記述するためには、時間依存ハートリー・フォック法を超えて電子の相関を取り込んだ波動関数を利用しなければならない。実際、時間に依存した多配置波動関数によって、knee 形状は再現可能である。

 ここで、多配置波動関数と knee 形状の再現の間にはどのような関係があるのかであろうか。 あるいは、動的な電子相関という言葉で表現される電子の相関した運動をどのように捉えて、どのように理解したらよいのであろうか?この疑問に答えるために、最近我々は時間に依存した有効ポテンシャル理論に注目している。

 講演では、これまで、我々が開発してきた多配置時間依存波動関数理論[2]を紹介し、動的な電子相関を理解する目的で開発を行っている時間依存有効ポテンシャル理論[3]の現況を紹介する。

[1] B. Walker, B. Sheehy, L. F. DiMauro, P. Agostini, K. J. Schafer, and K. C. Kulander, Phys. Rev. Lett. 73 (1994) 1227.
[2] T. Kato and H. Kono, Chem. Phys. Lett. 392 (2004) 533.
[3] T. Kato and K. Yamanouchi, Phys. Rev. A 98 (2018) 023405.