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2020.12.01

研究ニュース

オルガネラ間コンタクトサイトを可視化、定量化する新しい手法を開発

細胞の中には、オルガネラ*1と呼ばれる脂質の膜で囲まれた細胞小器官が発達しています。オルガネラは膜内に特定の酵素群を隔離、濃縮することで独自の機能を効率よく安定に発揮ので、互いに混ざり合わないように、独立して存在すると長年考えられてきました。しかし最近の研究により、オルガネラ膜の一部に異なるオルガネラ膜と結合する特殊な領域「オルガネラ間コンタクトサイト」が形成され、そこを介してオルガネラ間で物質や情報をやり取りすることが指摘され始め、世界的に大きな注目を集めています。

田村康教授(山形大学理学部)らの研究グループは以前、世界に先駆けて複数の異種オルガネラ間コンタクトサイトを、生きた細胞内で、スプリットGFP*2*3と呼ばれる分断された蛍光タンパク質を利用することで可視化することに世界で初めて成功していました。本研究では、この実験系をさらに改良することで、より定量的にオルガネラ間コンタクトを評価できる実験手法を開発しました。この実験系の確立により、まだその実態がわかっていないオルガネラ間結合因子の探索や、コンタクトの制御機構の解析への応用が期待されます。本研究の成果は2020年11月20日付「Frontiers in Cell and Developmental Biology」誌にオンライン掲載されました。

 

掲載雑誌

雑誌名: Frontiers in Cell and Developmental Biology 著者: 田代晋也1, 柿元百合子2,新名真夏1, 藤本慎太郎1,田村康1. 題名: Improved Split-GFP Systems for Visualizing Organelle Contact Sites in Yeast and Human Cells 所属: 1. 山形大学理学部 2.山形大学大学院医学系研究科先進的医科学専攻

 

※用語解説 

1. オルガネラ:核、小胞体、ミトコンドリア、液胞、葉緑体などに代表される真核細胞内に発達した膜構造のことで、細胞小器官とも呼ばれる。

2. GFP:Green Fluorescent Proteinの略でオワンクラゲから単離された緑色蛍光タンパク質。

3. スプリットGFP:GFPタンパク質を2つに分断し、蛍光を出せなくした2つのタンパク質断片。これらのタンパク質断片が十分に近い距離に近づいた時にGFP分子が再構成され、蛍光を発するようになる。これまではタンパク質間相互作用の検出などに利用されてきた。

ヒト培養細胞におけるミトコンドリア(赤紫色)と,今回開発した手法で可視化したミトコンドリア-小胞体間コンタクトサイト(緑色)

ヒト培養細胞におけるミトコンドリア(赤紫色)と、今回開発した手法で可視化したミトコンドリア-小胞体間コンタクトサイト(緑色)を示した。

田村康研究室


SDGS3と9