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2020.12.09

研究ニュース

理工学研究科の保科一輝さんが2020年度地球環境史学会年会で優秀発表賞を受賞

受賞した保科一輝さんが賞状を持つ写真

受賞した保科一輝さん

2020年11月7日にオンライン開催された2020年度地球環境史学会年会で、大学院博士後期課程1年生の保科一輝さん(Jordan研究室)が優秀発表賞を受賞しました。発表タイトルは「チベット南部から産出した石灰質ナンノ化石に基づく東部テチス海閉鎖時期の古海洋学的制約」です。内容は以下となります。

 

「インド-アジアの衝突と新生代の寒冷化」

インド亜大陸とユーラシア大陸の衝突により形成されたヒマラヤ山脈は地球上で最も標高が高く、季節風を形成しました。季節風は、夏に太平洋側から、冬に日本海側から風が吹き、四季の変化をもたらします。

しかし、両大陸の衝突時期は、多くの研究者により求められてきましたが、決定的な時期はよくわかっていませんでした。私たちは、両大陸の衝突以前にその間にあったテチス海が消滅することが大陸の衝突と考えました。そして、最後に海で堆積した地層のあるチベット南部で試料採取を行い、進化が極めて速い石灰質ナンノ化石(約10㎛程度の海洋プランクトンの化石)に着目し、衝突時期を始新世前期ヤプレシアン期(5367-5264万年前)に制約しました。一般的に堆積物中の再堆積した化石は、1%未満でありますが、ここでは、75%以上が再堆積した化石で、白亜紀~古第三紀(1億4400万年前~5600万年前)の化石が混ざってみられました。石灰質ナンノ化石は極めて微細なため、砂や泥の粒子と一緒に風化や侵食されやすいことに着目し、研究対象地域のチベット南部は大陸の押し合いにより、古い地層が陸上に押し上げられ、風化侵食の影響を大きく受けたことを指摘しました。

ヒマラヤ山脈の形成と地球の寒冷化は密接に関係していると考えられています。地球は両大陸の衝突以降に寒冷化しました。ヒマラヤ山脈は、両大陸の衝突以降、中新世前期(約2000万年前)まで、逆断層が形成さ、ひずみが解消され続けたため (テクトニクス・エスケープ)、 十分に隆起することはありませんでした。しかし、逆断層の形成は、多量の岩石を砕き、空気と触れる表面積を増大させたため、風化侵食が促されました。また、中新世以降の隆起もまた、風化侵食を促進させ、大気中の二酸化炭素濃度を低下させていったと考えられています。

このようなことから、ヒマラヤ山脈は私たちの生活に長い間大きな影響を与えてきたことがわかります。

チベット南部の堆積環境モデルの様子

チベット南部の堆積環境モデル
(上向きの赤い矢印は歪による力または、スーパープルームによる押し上げであると考えられている)


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