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2021.04.05

研究ニュース

フラーレン結晶に閉じ込められたリチウムの量子力学的運動を探究する

リチウムの核波動関数(青い等高面)とフラーレン結晶の電子雲(ワイヤーフレーム)

サブナノサイズ(およそ100億分の1メートル)の細孔に閉じ込められたリチウムの運動は,ミクロの世界に特有の量子力学に支配されます.リチウムの量子力学的運動は,リチウムイオン二次電池や種々の分子デバイスの機能に本質的ですが,未だ十分に理解されていません.

物理学分野の安東 講師らは,サッカーボール状のフラーレン骨格にリチウムを内包した結晶 [Li+@C60]PF6- に着目しました(図参照).リチウム内包フラーレン結晶は,フラーレンを取り囲むイオンの存在がリチウムの量子力学的運動を劇的に変える物質群として注目されています.フラーレンは柔軟なパイ電子雲をもち,また,結晶内部でわずかに構造歪みを示します.これらのファクター(周囲のイオン種,パイ電子雲,構造歪み)がどのように絡みあってリチウムの運動が決定されるのか,高精度な電子状態計算と独自開発した核波動関数計算プログラムを用いてミクロの相互作用の観点から検討しました.これにより,結晶中に捕らわれたリチウムの核波動関数(量子力学的運動を記述する関数)が安定化・局在化する仕組みを初めてつまびらかにしました.本研究は,柔軟な電子雲をもつ細孔に閉じ込められた軽元素の量子力学的運動を見通しよく理解する方策を提案し,様々な細孔研究の深化と発展に資するものです.

本研究の一部は,科学研究費補助金(若手研究 JP18K14234)と静岡大学電子工学研究所の共同研究プロジェクトの支援を受けて実施されました.山形大学小白川キャンパスでは,電子状態計算プログラムGaussianとGaussViewが利用できます.利用希望者は安東まで(理学部四号館C308号).

論文名

Quantum States of the Endohedral Fullerene Li+@C60 Surrounded by Anions:

Energy Decomposition Analysis of Nuclear Wave Functions

 

掲載雑誌

Physical Chemistry Chemical Physics,2021年,DOI: 10.1039/D1CP00056J

著者名

Hideo Ando1 and Yoshihide Nakao2

1 山形大学理学部,2 九州産業大学生命科学部


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