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2021.04.05

研究ニュース

【特集】科研費取得教員の声-カーボンナノチューブ電極を駆使した配位高分子ナノ結晶薄膜のエレクトロ・イオニクス- (研究代表者:栗原正人教授)

カーボンナノチューブ薄膜の走査型電子顕微鏡像.

山形大学に赴任してから18年間、幸い、連続して科研費の採択を受けて、栗原らはナノテクノロジー関連の研究を継続しています。例えば、金属ナノ粒子、配位高分子(遷移金属イオンと無機/有機分子からなる化合物)としてプルシアンブルー(PB、300年以上前から歴史的に知られる青色顔料)及びその類似体(PBA)ナノ粒子の作製法、及び、それらの溶媒への分散法(インク化法)、これら分散液を利用した薄膜作製法などについて研究し、山形大学を出願人とする多数の特許も成立しています。

2021年度から始まる基盤研究Bでは、炭素の同素体であるカーボンナノチューブ(CNT)を活用した研究開発を4年間推進します。SDGsからも、大きなエネルギーを消費する蒸着金属から、資源枯渇がない炭素電極材料へ転換するナノテクノロジーは重要な位置付です。ここでは、分担研究者の石崎学講師(山形大学・理学部)と共同開発し、2019年に特許出願した「透明性(光透過性)が高く、且つ、電気伝導に優れるCNT超薄膜の作製法」を活用し、その基礎から応用研究を展開します。具体的には、PB、PBAナノ粒子インクから作製したナノ薄膜の機能について、CNT薄膜電極を駆使し明らかにしていきます。もう一人の分担研究者である安東秀峰講師(山形大学・理学部)との3名での共同研究で、インパクトファクター(IF)で10を超える世界的権威のある化学雑誌「Journal of Materials Chemistry A」にHot paperとして掲載された研究成果を発展させていきます。PB、PBAからなるナノ薄膜は、その結晶格子内に規則正しいナノサイズの穴(空孔)を持っており、アルカリ金属イオンの種類(例えば、リチウムとカリウム)の違いで選択的にその穴を移動できることを実験と理論計算の両方から明らかにしました。また、そのナノ薄膜は半導体に類似した電子伝導を示すことから、研究課題のタイトルにあるように、電子移動(エレクトロニクス)とイオン移動(イオニクス)の両方を制御するナノ薄膜の化学が展開できます。将来的には、実用化も視野に入れた薄膜素子(デバイス)構築に向け、このCNT薄膜電極の活用はキーテクノロジーになります。本研究推進には、これまでの研究室の学部・大学院修士課程・博士課程の学生の試行錯誤の繰り返しによる研究成果がその大きな原動力になっています。


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