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2022.11.01
研究ニュース
2022年9月19日〜22日に開催された第16回分子科学討論会において、物理学分野安東研究室の博士前期課程2年生 伊藤暖 氏が分子科学会優秀ポスター賞を受賞しました。200名弱の候補者から厳正な審査の結果、15名が表彰されました。
発表題目は「銅ヘキサシアノ鉄酸のリチウムイオン伝導にヤーン・テラー歪みが及ぼす影響」です。銅ヘキサシアノ鉄酸(CuHCF)はリチウムイオン二次電池の電極等への応用が期待される物質であり、電極活物質としての機能発現にはミクロの細孔中のリチウムイオン伝導が鍵となります。しかし、イオン伝導メカニズムの解明は現代の実験技術を以てしても容易でなく、当該分野の発展と深化に理論研究が大きく貢献します。同氏の研究では量子力学に基づく理論計算により、CuHCFのごく僅かな構造歪み(数オングストローム)が細孔内部のリチウムイオン伝導経路に顕著に影響する可能性を初めて指摘しました。また、構造歪みと電子状態、分子間相互作用、リチウムイオン伝導経路が互いにいかに関連付くか、丹念な理論的考察を通して明瞭に整理し、高く評価されました。
本研究は理学部の研究クラスター「材料イノベーションのための実践基礎科学」が主導する共同研究課題として実施され、物理学分野の伊藤暖 氏、安東秀峰 講師、化学分野の石崎学 講師、栗原正人 教授に加え、九州産業大学の中尾嘉秀 准教授が参画しました。また、科学研究費補助金(安東・若手研究(JP18K14234)、栗原・基盤研究B(21H01945))の支援を受けました。本研究成果はThe Journal of Physical Chemistry A 誌にも掲載されています(J. Phys. Chem. A 2022, 126, 6814–6825)。
発表論文の詳細
表題:Effect of Static Jahn–Teller Distortion on the Li+ Transport in a Copper Hexacyanoferrate Framework
著者:Dan Ito, Yoshihide Nakao, Manabu Ishizaki, Masato Kurihara, and Hideo Ando
掲載誌:The Journal of Physical Chemistry A
URL:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jpca.2c02398