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2022.12.22

研究ニュース

IXPE衛星によってベラパルサー星雲から究極的に強く偏光したX線が観測され、その解析結果がNature誌に掲載されました(理学部教授 郡司修一、理学部プロジェクト研究員 渡邉瑛里)

・2022年12月21日(米国時間)、IXPE衛星によるベラパルサー星雲の観測結果がNature誌に掲載されました。

太陽よりも数十倍重い星は、一生の最後に大爆発を起こします。この爆発の中心部には、中性子星と呼ばれる非常に高密度(地球の数100兆倍)かつ強磁場(地球の地磁気の約1兆倍)の天体が形成される事があります。このような中性子星は高速で回転しており、この回転エネルギーと磁場のエネルギーを使って周囲に電荷を持った粒子を放出します。この荷電粒子は、爆発で吹き飛んだ周辺の物質にぶつかり、X線などの非常に高いエネルギーの電磁波を放出する事が知られています。そのためパルサーの周りには、X線を放出するパルサー星雲と呼ばれるものがよく観測されます。今回IXPE衛星が観測したVelaパルサー星雲は、今から約11000年前に爆発した天体の残骸であり、ほ座(南半球からしか観測できない星座)の方向に存在します。光の速度で行ったとしても、地球から約1000年近くかかる距離に位置しています。

パルサー星雲から放出されるX線は、残骸の中にある磁場と荷電粒子がぶつかって絡みついている最中に放出されたものだと考えられています。しかしその磁場がどのようにしてできたのか、またどの程度綺麗に磁場が揃っているのか詳しい事はまだ分かっていません。このような磁場の情報を知るための強力な手段は偏光を観測することです。磁場が揃っているほど偏光度が高くなるはずだからです。しかし今までX線の偏光が測定されたパルサー星雲は、カニ星雲という天体だけであり、その星雲全体の平均的な偏光度は精々20%程度でした。そのため今回のベラパルサー星雲の場合もその程度の偏光度になると当初予想していました。しかし実際の観測結果はこの予想を覆し、平均的な偏光度は45%とカニ星雲に比べ2倍以上強く、さらに領域を絞って見た場合、60%を超える様な領域がある事が発見されました。このような予想を超える結果が得られたために、IXPEチームの中で幾つものグループが独立にデータ解析を行いましたが、我々山形大学の渡邉瑛里プロジェクト研究員や郡司教授もその解析に参加しました。そして、間違いなくこのように強く偏光したX線が放出されていることを確認しました。IXPE衛星は今後さらに新たなパルサー星雲についても調べる予定であり、今回分かったよく揃った磁場の起源が何に関連しているのかより深く研究を進めていきます。

詳しい内容はこちらおよびこちらのページをご覧下さい。

IXPE衛星はX線の偏光撮像が行える世界初のX線観測衛星で、米国とイタリアの主導する国際共同プロジェクトであり、日本からも山形大学、広島大学、理化学研究所、大阪大学、千葉大学、名古屋大学、東京理科大が参加しています。

本研究の一部は、以下の2つの科学研究費によってサポートされています。
1)科学研究費補助金基盤研究A(課題番号:19H00696)
「X線偏光観測による回転するブラックホールの時空構造の解明」
研究代表者:山形大学 郡司修一
研究分担者:理化学研究所 北口貴雄、広島大学 水野恒史、名古屋大学 三石郁之、大阪大学 林田清(故人)

2)科学研究費補助金若手研究(課題番号:22K14068)
「IXPE衛星を用いたカニ星雲の粒子加速機構の解明」
研究代表者:山形大学 渡邉瑛里

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