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植物機能

植物特有の環境応答メカニズムを探る

植物機能の理解と最適化によるグリーン・イノベーション

生物学分野 宮沢豊 准教授

私たちは、これまで世界をリードしてきた水分屈性研究をさらに推進することで、1)現存の耐乾燥性植物作出技術の限界を超える品種の開発、2)灌漑農業での効率的養水分供給と半乾燥地などへの耕作地の拡大、3)植物工場などの閉鎖生態系での効率的な植物栽培技術の開発を目指して、日々の研究を進めています。そして、近いうちに地球が抱えてしまった食料、環境、エネルギーといった問題を植物の緑を活かすことにより解決する「真の」グリーン・イノベーションにつながる基盤技術を創出します。

産業革命以降、化石燃料の莫大な利用による二酸化炭素排出が招いた地球温暖化は、現在の地球環境を脅かす重大な問題として21世紀に持ち越されました。これに対し、現状打破のためのグリーン・イノベーションの推進が世界的に試みられています。しかしながら、その研究の現状は代替エネルギーの開発や既存のエネルギーの有効利用といった取り組みに重きが置かれ、既に放出された二酸化炭素の回収と再利用という本質的な課題にはほとんど着手できていません。

光合成は二酸化炭素と水から光エネルギーを利用して炭水化物を合成する植物固有の能力です。地球上における植物とは、二酸化炭素を最も効率的に人類が有効利用できる形態に変換できる唯一無二の存在であります。この植物機能の重要性は、どれほど工学や医学が進歩しようとも、人間が植物の同化した炭水化物を直接的、間接的に消費する生物である以上、揺らぐことはありません。それゆえ植物機能開発による炭酸同化能の最大化は、大気中の二酸化炭素を削減するだけでなく、持続可能な食料、エネルギー供給にも寄与する必要不可欠な課題といえます。一方、地球温暖化による乾燥地、砂漠の拡大は、植物の生育域を大きく狭めています。こうした現状に対し、私たちは地球上に現存する水の有効利用を可能にする植物機能、すなわち水分屈性に焦点をあてて研究を進めています。水分屈性は、陸上植物の根が土中の水分勾配を感知し、水の多い方向へ根を伸長させる性質で、水中から陸上に進出した植物が進化の過程で獲得した能力と考えられています。現在、この水分屈性の仕組みを分子のレベルで解き明かすことにより、植物が生育できない環境を植物生育域に変えていく技術を創成したいと考えています。

現存する水を有効に利用した植物生産技術開発の必要性


陸上植物の最も大きな特徴は、それが固着性であり且つ独立栄養性を有することにあるといえます。約5億年前に陸地環境に進出した植物は、陸上圏という新たな空間をその生育域として獲得しましたが、同時にそれまでの水中生活では経験することの無かった様々な環境変化にさらされることになりました。こうした変化のうち最も大きなものが水分環境であるといえます。言うまでもなく、水はあらゆる生物にとって必要不可欠な物質でありますが、植物は固着性であるがゆえに、移動による水獲得が出来ません。そうした中で、植物が動物に先んじ現在まで地上で繁栄してきた背景には、植物が独自の環境適応能力、とりわけ水分獲得能力を進化させてきたことが挙げられます。さらに、植物の独立栄養性を支える機能は光合成であり、その反応には水の存在が不可欠です。そして、これら植物の有する能力が現在の生態系構築の基盤となり、人類をはじめとしてすべての生物のエネルギー生産の基盤をなしているのです。この植物機能を現在の地球環境で効率的に発揮させるために必要であると私たちが着目している現象に、根の水分屈性があります。水分屈性は、植物の吸水器官である根が土中の水の勾配を感知し、水の多い方向へと根を屈曲伸長させる能力で、植物の陸上進出に伴い獲得された能力と考えられます。私たちは、この水分屈性に着目し、その発現機構の理解と利用から、地球規模で進行する諸問題の解決に取り組んでいます(図1)。

水分屈性欠損突然変異体 mizu-kusseui1(miz1)


この理解のために私たちは、モデル植物の1つであるシロイヌナズナを用いて水分屈性を正常に発現できない突然変異体の解析を行いました。その結果、水分屈性発現に必要な遺伝子としてMIZU-KUSSEI1、2(MIZ1、MIZ2)を同定しました(図2)。その後、生理学的、分子生物学的研究を進めることによって、水分勾配感受に伴うアブシジン酸の合成が水分屈性に重要であること、水分屈性発現にはオーキシンの量的調節が関わること、根における光の受容(根が乾燥した地表面に出ていることと関係があると考えられる)が水分屈性を促進することなどがわかりました。こうして、根の水分屈性発現の主要な経路と、それに関わる遺伝子や植物ホルモンを同定することが出来ました。得られた知見をまとめたのが図3です。

水分屈性発現機構の主要経路の解明


さらに最近、MIZ1を過剰発現させた植物の水分屈性が、過剰発現させない植物より促進されることを見いだし、この水分屈性の促進が、水分限定環境下でのバイオマス生産や植物の生存に大きな役割を果たすことを見いだしました(図4)。目下のところ、MIZ1やMIZ2が植物体内でどのように機能することにより、水分屈性が制御されるのかわかっていません。現在はMIZ1、MIZ2を中心に、水分屈性発現に必要な機能分子がいつ、どこで、どのように機能することが水分屈性に必要なのかを明らかにする研究を進めています。

水分屈性の利用による水分限定環境下での生育に有利な植物の作出


私たちは、これまで世界をリードしてきた水分屈性研究をさらに推進することで、1)現存の耐乾燥性植物作出技術の限界を超える品種の開発、2)灌漑農業での効率的養水分供給と半乾燥地などへの耕作地の拡大、3)植物工場などの閉鎖生態系での効率的な植物栽培技術の開発を目指して、日々の研究を進めています。そして、近いうちに地球が抱えてしまった食料、環境、エネルギーといった問題を植物の緑を活かすことにより解決する「真の」グリーン・イノベーションにつながる基盤技術を創出します(図5)。

日本発の独自なグリーン・イノベーションの創出


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