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非平衡化学

自然の謎を解き明かす不思議な化学

ビーカーの中の反応と自然の中の反応の違いを探れ

化学分野 並河英紀 教授

化学反応の多くはビーカーという外界から孤立した空間の中で行われる。一方、自然界は物質やエネルギーが絶えず流出入している連続的な空間であり、その中で繰り広げられる原子・イオン・分子間の反応は、たとえば化学反応が時間とともに振動するなどビーカーの中では発現しない実に多様な特徴を示す。本研究室では、自然界の環境を模倣した様々な実験システムを構築し、その中で発現する化学的反応を、自然界の様々な現象を理解するためのモデルとして提案する。そして、そこに介在する一般法則を物理化学的な視点で考察し、自然界の謎を解き明かすことを目指している。

心臓の鼓動、ヒトの24時間周期の生活リズム、被食・捕食動物の個体数の増減。いずれも自然界で見られる時間的に繰り返される振動現象である。これらは物質やエネルギーの流出入が絶えず行われる環境下においては止まることがない。 この様な環境を化学的に模倣したのが、下の図にある連続流通攪拌反応システムである。ビーカーの中で化学反応を発生させる点ではただの化学反応ではあるが、反応原料の連続的供給、反応生成物の連続的排出をしている点において、自然界の特殊なシステムを 模倣している。その結果、ビーカー内の反応は一定の状態(平衡状態)に到達することなくpHの増加と減少が繰り返される振動状態となり、まるで心電図のようなpH-時間曲線となっている。本研究室では、この様な時間的に振動する化学反応の制御を通じて、自律的な状態変動を伴う分子システムの設計および自然界の振動現象の発現機構を謎に迫る研究をしている。


2.空間的な振動特性を有する化学反応の制御と理解

シマウマの体表、メノウの模様、太陽系惑星の軌道。いずれも自然界で見られる空間的に繰り返される振動現象である。これらは、その模様(空間構造)を形成する際の構成成分間の反応・拡散速度の絶妙なバランスにより 作られているものと考えられている。この様な空間的な模様を示すものの中で、特定の「規則性」を有するものがある。今から100年以上も前に発見されたLiesegang現象と呼ばれるものである。下の図の左側には、薄いゲル薄膜の中で化学反応を行った後の 写真であるが、綺麗な同心円状の模様が観測される。これがLiesegang現象によって作られたものである。また、右側にはシミュレーションによってこれを再現したものが示されている(提供:本学理学部・方教授)。本研究室では、このLiesegang現象の 普遍的な化学・数理科学モデルを構築し、自然界で見られる特定の「規則性」の謎に迫る統一的モデルの提案を目指している。


3.細胞膜表面におけるクラスター誘起自己組織化相転移

細胞膜表面は多種多彩なイオン・分子が行き交い反応を繰り広げる動的空間になっている。たとえば、抗菌ペプチドとして知られるマガイニン2は、細胞膜表面に吸着・自己組織的に会合化した後、膜に小さな穴を開け細胞機能を 失活させる能力を有している。この様な生体内反応を理解することは、生体内システムを模倣した薬剤の開発や新規薬理活性の構築などに重要な知見となる。本研究室では、ポリオキソメタレートと呼ばれるアニオン性クラスターを人工細胞膜に 相互作用させた結果、細胞膜構造を破壊するとともに全く別の自己組織化構造へと相転移することを見出した。この結果を元に、抗菌ペプチドと同様に細胞膜をターゲットとした生理活性物質の開発につながる応用研究のみならず、 両親媒性分子とイオンとの間の相互作用をリンクさせるホフマイスター系列の理解を助ける基礎学問的な展開を目指している。


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