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2022.11.11

研究ニュース

IXPE衛星によってブラックホールからX線の偏光が初めて観測され、その観測結果がScience誌に掲載されました(理学部教授 郡司修一)

2022年11月3日(米国時間)、ブラックホール天体Cyg X-1(はくちょう座 X-1)のIXPE衛星による観測結果がScience誌に掲載されました。

Cyg X-1はブラックホールとして有名な天体です。強い重力場によって周りからのガスを吸い込む過程でガスはブラックホールの周りに円盤状に溜まり、高温に熱せられX線が放射されます。この円盤を膠着円盤と呼びます。膠着円盤以外にコロナというより高温のガスがブラックホールの周りに存在する事が観測的に分かっており、ここからもより高いエネルギーのX線が放射されます。しかしブラックホールは非常にコンパクトな天体であり、さらに地球から遠いため、このコロナがブラックホールに対してどの位置に存在しているのかは分かりませんでした。今回IXPE衛星の観測により、円盤の回転軸に沿った方向に強く偏光したX線が検出された事から、コロナが高温の円盤を挟みこむように存在しているか、若しくは円盤の内縁とブラックホールの間に位置しているかのどちらかだという示唆が得られました。詳しくは、こちらおよびこちらをご覧下さい。

また、日本語で書かれた理化学研究所からのプレスリリースの記事もありますので、合わせてご覧下さい。

今回はコロナからのX線が主でしたが、膠着円盤からのX線がメインに観測される事もあります。

そして観測条件が揃うと、膠着円盤からのX線を観測する事でブラックホール本体の回転の様子を調べられる可能性があります。これが2022年にティーディマン・ふすま賞を受賞した山形大学理工学研究科博士前期課程1年の管佑真君の研究に大きく関連します。今後の研究の進展が楽しみです。

IXPE衛星はX線の偏光撮像が行える世界初のX線観測衛星で、米国とイタリアの主導する国際共同プロジェクトであり、日本からも理化学研究所、広島大学、山形大学、大阪大学、中央大学、名古屋大学、東京理科大が参加しています。

本研究の一部は、科学研究費補助金基盤研究A(課題番号:19H00696)

「X線偏光観測による回転するブラックホールの時空構造の解明」によってサポートされました。

研究代表者:山形大学 郡司修一

研究分担者:理化学研究所 北口貴雄、広島大学 水野恒史、名古屋大学 三石郁之、大阪大学 林田清(故人)

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