Research
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ブラックホールの周りの降着円盤から出てくるX線の偏光方向がどうなるのかを示したイラスト。ブラックホールから遠い場所からは出てくるX線の偏光は円盤の回転軸に垂直(図のa)に相当)、ブラックホールからそこそこ近い場所から出てくるX線の偏光は、X線の軌道が重力場で曲げられる事で多少回転する(図のb)に相当)。ブラックホールのごく近傍から放出されるX線はブラックホールの強い重力場によってもう一度降着円盤に戻り、そこで反射されて出て行く。その場合の偏光方向は円盤の回転軸に平行になる(図のc)に相当)。
X線の偏光が測定できるIXPEによって、様々な高エネルギー天体の観測が行われてきました。山形大学もIXPEの日本チームとして幾つかの天体観測に関わってきましたが、この度天文月報でこの特集記事が組まれました。
宇宙で生じる高エネルギー現象を解明するには、そこから出てくるX線の観測がとても重要です。そのため1960年代からX線を観測できる様々な衛星が打ち上げられ、X線のエネルギー、到来タイミング、天体のX線画像が非常に高精度で観測できるようになってきました。それに加え2021年12月に打ち上げられたIXPE衛星は、以上に挙げた3つと同時にX線の偏光も精度良く測定できるオールマイティーなX線天文衛星です。すでに打ち上げから2年半が経ち、パルサー星雲の磁場構造、ブラックホールやマグネターからの偏光X線の検出など数多くの科学的成果をあげてきました。そのため2024年1月には、Weisskopf博士とSoffitta博士を初めとしたIXPEチームにRossi Prizeが授与されました。
衛星の開発は主にNASA/MSFCやイタリアの研究グループが担当していますが、日本も科学的な貢献を行っています。今回日本が大きく貢献した研究に関して、天文月報という雑誌(日本天文学会が発行する月刊誌で、天文学に関する研究の解説、 天文学研究に関する情報提供などを通して、 天文学に関する研究の進歩普及を図ることを目的とした雑誌)で特集が組まれました。この特集は4本の記事で構成されていますが、そのうち3本は山形大学が大きく関わっています。特に山形大学の前プロジェクト研究員(現在は客員研究員)である渡邉瑛里さんによるパルサーウインドネビュラの磁場構造の研究(2023年1月の学長記者会見を参照)や2024年3月に山形大学理工学研究科を卒業した管佑真君によるブラックホールのスピンの研究(2022年ティーディマン・ふすま賞受賞)などは、彼らが記事の主著者を務めています。
ご興味のある方は以下をご覧下さい。