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国立大学法人理学部長会議声明 ―未来への投資―

2016.11.07


                                        平成28年10月31日

                  国立大学法人理学部長会議声明           
                      -未来への投資―

 大隅良典先生のノーベル医学・生理学賞の受賞は、昨年の梶田隆章先生のノーベル物理学賞ともども、まさに理学の
目指す基礎研究の成果です。大隅先生の受賞は、理学の教育・研究に携わる私たちとして、大変嬉しく、また誇らしく
思います。昨年、梶田先生は、先生の研究は何の役に立つかと聞かれて、「知の地平を広げる」と答えられ、今年の大
隅先生は、「『役に立つ』という言葉が社会を駄目にしている」と答えられました。これらの言葉は、理学研究の特徴
を大変よく表しています。基礎科学は人類の生み出した文化であり、共有・継承すべき知的資産です。また、基礎科学
は今すぐ社会の役に立たないかもしれませんが、いずれ役に立つと、私たちは確信しています。しかし、「役に立つ」
を前提の研究からは、梶田先生や大隅先生のような誰も踏み込んだことのない新たな発見は決して生まれません。出口
が見えないだけに基礎研究は大変難しいのです。研究者の未知のものに対する不断のアプローチが基礎研究の頼りであ
り、この不断のアプローチを続ける原動力が「好奇心」です。しかし、「役に立つ」研究推進の大合唱が、「好奇心」
を持ち続けることを困難にさせ、「好奇心」を基盤とした基礎研究を委縮させています。特に、若い世代に対する影響
は甚大で、基礎科学を目指す若手の急激な減少をもたらしています。
 国立大学法人理学部長会議は、我が国の基礎科学研究を継承・発展させ、豊かな社会を形成するために必要な『知』
の教育と研究を推進することによって社会に貢献することを目指して組織されています。私たちは、「基礎科学こそ
が、科学・技術の基盤であり、我が国の国力のもとであり、これなくしては、科学・技術の人類への貢献も我が国独自
の産業の創出もおぼつかないのではないか」と考え、大隅先生のノーベル賞受賞を機に声明を出すことにしました。私
たちは、現在我が国の置かれている困難な財政上の問題も十分理解した上で、未来への投資として基礎科学の推進を訴
えます。また、基礎科学推進の基盤として重要な役割を果たしている運営費交付金が継続的に削減されている現状、そ
の結果として教員が削減されている大学現場の危機を訴えます。

私たちが訴えるのは具体的には以下の3点です。

1. 基礎科学に対する理解と推進への支援をお願いします。

2. 基礎科学の推進のために、国立大学の運営費交付金は欠かせません。運営費交付金のこれ以上の削減は国の未来
  を危うくします。直ちにやめるべきです。

3. 国立大学の教育・研究の基盤になっている教員の削減は綿々とつながる知の鎖を断ち切り、教育力及び研究力を
  弱体化させます。教員数維持にご支援をお願いします。

 

 国立大学の基盤経費として措置されている運営費交付金は、独創的な研究のシーズを広く探索するための原資とな
ります。大隅先生の研究で言えば、顕微鏡を使って動く粒を観察する過程に当たります。この時期の研究は、研究者
自身にとってもどのように展開するかわかりませんので、競争的資金で支援されることはありません。ましてや産業
界からの支援はあり得ません。しかし、大隅先生の研究からもわかるように、この時期の研究が決定的に重要です。
この10年間以上にわたり毎年1%ずつ行われてきた運営費交付金の削減が基礎研究の体力を奪っていることは明らか
です。このままでは、10年後、20年後に日本からノーベル賞が出なくなることを懸念します。
 運営費交付金の削減を受け、教員数はこの10年間で大きく減少しています。さらに、今年度からの第5期科学技術
基本計画を受け、多くの国立大学で大幅な教員削減が提案されています。教員数の大幅な減少は、大学の知の継承と
革新を損ないます。国立大学は明治以来、日本の教育・研究のスタンダードとしてそれぞれの地域から我が国の発展
に寄与し、我が国の学術を支えてきました。この役割を堅持するためにも、これ以上の教員削減は避けるべきだと考
えます。また、教員の削減は次世代の若手教育者・研究者の育成に対しても深刻な影響を与えます。大幅な教員削減
を迫られている大学においては、定年で退職する教員を当分の間補充しないとしています。したがって、第5期科学
技術基本計画中は若手教育者・研究者が多くの大学で採用されないという、本計画で謳っている次世代の若手研究者
養成とは全く逆の事態を誘導しかねません。自分のキャリアが確保されないこの状況の中で、次世代を担う若手が人
生をかけて研究に参入するとは思えません。
 このように、大学だけでなく国にとっても事態はきわめて深刻です。大隅先生や梶田先生の研究で見られた,若手
研究者が生き生きと未知のものに挑むためのポストも場所も資金も失われつつあります。未来への投資として、基礎
研究の推進とその基になる、運営費交付金と教員ポストの確保を訴えます。

 

 

                        国立大学法人理学部長
                            北海道大学理学部長        石森浩一郎
                            弘前大学理工学部長        加藤博雄
                            東北大学理学部長         早坂忠裕
                            秋田大学理工学部長        村岡幹夫
                            山形大学理学部長         玉手英利
                            茨城大学理学部長         折山 剛
                            筑波大学理学系組織連絡会議議長  木越英夫
                            埼玉大学理学部長         鈴木 健
                            千葉大学理学研究科長       柳澤 章
                            東京大学理学系研究科長      福田裕穂
                            東京工業大学理学院長       岡田哲男
                            お茶の水女子大学理学部長     吉田裕亮
                            新潟大学理学部長         松尾正之
                            富山大学理学部長         中村省吾
                            金沢大学理工研究域長       青木健一
                            信州大学理学部長         尾関寿美男
                            静岡大学理学部長         塩尻信義
                            名古屋大学理学部長        松本邦弘
                            京都大学理学研究科長       森脇 淳
                            大阪大学理学部長         常深 博
                            神戸大学理学部長         齋藤政彦
                            奈良女子大学理学部長       林井久樹
                            島根大学総合理工学部長      廣光一郎
                            岡山大学理学部長         吉野雄二
                            広島大学理学部長         楯 真一
                            山口大学理学部長         松野浩嗣
                            徳島大学理工学部長        池田啓祐
                            愛媛大学理学部長         平野 幹
                            高知大学理学部長         鈴木知彦
                            九州大学理学研究院長       中田正夫
                            佐賀大学工学系研究科長      石橋孝治
                            熊本大学理学部長         市川聡夫
                            鹿児島大学理学部長        與倉昭治
                            琉球大学理学部長         山崎秀雄
 

 

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